「もしも養母上様が、この先姫君をお産みにな |
「もしも養母上様が、この先姫君をお産みになられるようなことがあれば、胡蝶とお名付け下さいませ」
「……」
「養母上様が帰蝶で、その姫君が胡蝶。…ええ、とても良いと思いまする」
にこやかに笑いながら言う奇妙を前に、濃姫は困ったような、しかし嬉しいような、
けれどもか悲しいような、とても複雑な思いにかられた。
──奇妙殿。本当にいるのですよ。徳姫や冬姫らに続く、あなたが妹と呼べる御子がもう一人。
──ああ、胡蝶と…。姫に左様な美しい名を付けられたらどんなに良いでしょう。
──なれど無理なのです。御子の名付けは殿の御勝手。私の一存では…。
濃姫は心の中で語りながら、愁いを帯びた瞳で、そっと奇妙を見据えた。EGT 功效
「養母上様、如何なされたのです。何故に、左様にお寂しげなお顔をなされるのですか?」
「…いいえ。何でもありませぬ。……のう、奇妙殿」
「何でございましょう?」
「万一、仮にのお話しにございますが、もしも、私が奇妙殿の…妹にあたる御子を生んでいたとしたら、奇妙殿はどう思われますか?」
それを聞き、奇妙は「え…」となり、濃姫の背後に控えていた古沍も、違う意味で「えっ」となった。が、奇妙殿の妹を成していたとしたら、奇妙殿はその子を可愛がって下さいますか?」
「……」
「如何です?」
奇妙は視線を膝元に落とし、そのまま黙して考えると、数秒後には視線を濃姫の方へ戻して
「はい!それは勿論にございます」
と、輝くような笑顔で答えた。
「それが養母上様がお生みになられた御子ならば、きっと誰よりも可愛がりまする!」
「まことですか?」
「はい。奇妙は故、兄として妹を守り、大切に致しとう存じまする」
明るく、屈託のない笑みを浮かべて言う奇妙を、濃姫は思わず抱き締めたくなった。
それほどに目の前の御子の優しさと純粋さに、大きく胸をかれていたのである。
愛しそうに奇妙の面差しを眺めながら
『そうじゃ。奇妙殿ならば…、この子ならばきっと─── 』
濃姫は、まるで希望の星でも掴んだかのような、幸福感に溢れる微笑を満面に湛えた。
同日の夜。
本丸・奥御殿の夫婦の寝所には、共に夜具の上に腰を下ろし、白い寝間着姿で相対している濃姫と信長の姿があった。
灯明の薄明かりが、夫婦の間をぼんやりと照らす中
「──殿。今宵は殿に、折り入ってお願い致したき儀がございます」
夜具の上で三つ指を揃えながら、濃姫は唐突に切り出した。
「…、願いとな?」
「はい。是非お許しいただきたい旨がございまする」
「此度は何じゃ?常在寺におわす姑殿を茶会招く件ならば、既に手配させてあるぞ?」
「いえ、此度はその件ではなく……。実は…奇妙殿のことで」
「奇妙とな?」
「はい。麓の館におわす姫君の存在を、奇妙殿に明かす訳には参りませんでしょうか?」
思いもよらぬ申し出に、信長は片眉をノ字に歪めた。
「明かす…、奇妙に姫のことを全て話すというのか!?」
「叶いますならば、是非にも」
信長は何度となく目を瞬きながら、真剣な眼差しで告げてくる濃姫を、当惑がちに眺めた。
「いったい如何したというのだ?奇妙に話したいなど……、何故に左様な考えに至ったのだ?」
その問いかけに、濃姫はスッと姿勢を正すと
「まことに畏れ多きことながら、そうすることこそが、姫を守る上での最善の道だからにございます」
先程と同じ真剣な眼差しで、再び夫の顔を凝視した。
「この先、殿が更なるご出世を果たされ、
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