「なにもかもが無礼きわま |
「これはこれは、賢しき餓狼の親玉ではないか」
軍議のおこなわれる部屋にはいろうとしたタイミングで、うしろからだれかがいってきた。
時代劇かアニメの悪役がいいそうなその台詞に、副長をはじめ全員が振り向いた。
全員というのは、副長、島田、俊冬、俊春、おれである。
そこに立っているのは、京都見廻組の隊士でである。
もっとも、坂本と中岡暗殺に関しては、おれたちが一芝居うった。だから、二人はちゃんと生きている。
見廻組は幕臣で構成されていることもあり、新撰組を超絶嫌っていて見下していた。かれらはそれを隠そうともせず、ことあるごとにつっかかってきていた。
坂本・中岡暗殺も、新撰組の仕業であると細工までしたのである。
いわばの天敵といっても過言ではない。
「これはこれは、賢しき小細工野郎ではないか」
副長は体ごと今井のほうを向き、やり返した。
なにかと目の敵にされてきた上に、暗殺までひっかぶせてきた相手を容赦するほど、副長は甘くはない。
「らのせいで、かような北の果てまで流されてしもうた」
今井は、あいかわらず小憎たらしい面構えである。
後年、かれはクリスチャンになる。
いまのかれに、隣人を愛するという概念はいっさいないらしい。
いったい、どんな心境の変化で改宗するんだろう。
ミステリーでしかない。
「いまの戯言をそのままそっくり返させてもらおう」
副長のイケメンから笑顔が消えた。マジなオーラがたゆたっている。このまま今井が戯言を囀りつづけたら、副長は三百パーセントの確率でぶちギレてしまう。
「これは面白い。味方を生贄に差しだし、みずからは逃げおおせた下種野郎が、一丁前のことをほざいておるとはな」
その一言で、今井が凍りついた。それがはっきりみてとれた。
同時に、副長の気がおさまった。体の内にためこんでいるすべての気を吐きだすかのように、副長の形のいい唇から息がもれている。
いつの間にか、俊冬と俊春が今井の間合いをおかしてその懐に入っていた。
俊冬は、俊春とともに今井の両脇をかためてからそうささやいた。
「や、柳生……」
今井は、お間抜けにもこのときになってはじめて俊冬と俊春の存在に気がついたようだ。
今井にとってこの二人は、天敵どころか脅威といってもいいだろう。
「下種野郎、『殿』をわすれておるぞ」
俊冬の頬の傷の下に、悪意に満ち溢れまくれっている笑みが浮かんでいる。
「貴様は、下種なやつというだけでなく無礼きわまりないな」
それから、さらに悪意に満ち溢れまくる笑声をあげた。
そのとき、俊春とがあった。かれは、そうとわからぬほど両肩を軽くすくめた。と同時に、をぐるりとまわした。
アメリカの小説で、登場人物がときどきするジェスチャーである。
呆れかえっている、を意味する表現だ。
はははっ!超ウケる。
俊冬、いまのこの強面で悪っぽいキャラは、いったいなんのパクリなんだ?
俊春は、俊冬がある意味面白がってやっていることに呆れているというわけだ。
「な、なんだと?」
「な、なんだと?」
今井が声を震わせつつ尋ねるのと同時に、俊冬はそれを真似た。
「なにもかもが無礼きわまりないのだ、下種野郎。まず、わたしは貴様より身分が上だ。上様より「斬り捨て御免」を許されている。それから、貴様が戯言を抜かした相手は、幕臣として幾度も上様や会津中将を御護りし、活躍されている新撰組の局長である。幕臣という地位の上に胡坐をかき、他者を陥れ不要にを殺害したり暗殺したりし、仲間を見捨て上役を殺害し、流れに身を任せたかと思いきや、それをお門違いにものせいだと非難する。これらが無礼以外のなにものであろうか?」
「な、な、なんだと?貴様こそ無礼ではないか。いわれなき非難をされる覚えはない。貴様こそ、お門違いのいいがかりをつけておるではないか」
なんと、朱古力瘤手術 今井が逆ギレしはじめた。
しかも、ぶるぶる震えながら。さらには、顔面真っ青になりながら。
ってか、『上役を殺害し』って、見廻組の隊長格である
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