おれはおれで |
おれはおれで、いじられるのとムードメーカーとしてのスキルを磨きまくろうじゃないか。
あの世にいって、親父に「すごいな、肇。とてもわたしの息子とは思えない」ってほめてもらえるように……。
「でも、子宮內膜異位症 おかしな話ですよね?おれを護ってくれているのなら、なにゆえ率先しておれをいじったりいびったりいじめるんです?とくにたま、あなたです」
おおきな疑問をたたきつけてやった。事実である。
とくに俊冬は、餓鬼大将的にやりまくっている。
「It has nothing to do with this.」
俊冬は、しれっと英語で応じた。
「利三郎、覚えておくといい」
「アイ・アンダースタンド・イット!」
どうやら、駅前での留学講座がはじまったらしい。
「んん?いまのは、どういう意味かな?」
当然、好奇心旺盛な永遠の少年島田もしりたがる。
「島田先生、ただの屁理屈です。おれをいじったりするのとおれを護るっていうのは、関係がないらしいってことなだけです」
「親父がおれを護れって頼んだんですか?」
ふと気になったので、苦笑をひっこめて俊冬と俊春にきいてみた。
すると、二人はたがいのをみあわせた。
「いいや。ミスター・ソウマは、一度だってそんなことは口にしなかった」
俊冬がいい、俊春が継ぐ。
「かれは、きみと友達になってやってほしい、といったんだ。きみを護りたいというのは、ぼくらの勝手な想いだよ」
親父らしい。心からそう思った。
同時に、俊冬と俊春のことも、かれららしいと……。
とりあえずは、若松城にもどることになった。
おれのような雑魚は兎も角、副長はそう長い間不在にするわけにはいかない。桑名少将にも挨拶をせねばならない。
若松城へとあるきながら、ちやほやされた。
みんな、未来のことやどんなことをやっていたのか、ということをしりたがった。
興味津々っていうわけである。
もちろん、ちやほやされているのはおれではない。おれをのぞく
苦笑しつつ教えてやった。である。
「やっぱり兼定ってクレバーだったんだね。主計さんよりできるはずだよ」
「そうだよね。だって、すっごくクールだもん。主計さんなんかよりずっと頼りになるよね」
子どもらも大興奮である。英単語をまじえながら、相棒をほめたたえている。
っていうよりか、あからさまにおれをディスっている。
松本もまた同様である。
かれは、未来の医療技術や状況をしりたがった。医療に関する専門的なことを、あれやこれやと俊冬俊春に質問している。
そして、その松本の質問にそのどれにも淀みなくこたえている。
どうせおれなんて、医療に関しては応急処置か、「いたいのいたいのとんでけー」くらいしかしらないよ。
「主計」
副長がさりげなくちかづいてきた。
二人であるく速度をゆるめ、みんなと距離をとる。
俊冬と俊春と相棒は、おれたちのことに気がついていないはずがない。
「もっと面白い話がありますよ」
俊冬が、ソッコーでみんなの注目を集めるような話題をふってくれた。
副長とおれと二人きりで話がしやすいように、という配慮であることはいうまでもない。
「主計、だましていて悪かったな」
副長は、まえをゆくみんなの背をみつめたままいった。
「いえ、いいんです。だまされた、とは思っていません。だますつもりなら、ずっと隠しとおしたでしょう?から、いつかは告げるつもりだった。そのタイミングがいまだったっていうだけのことです。ちゃんと告げてくれたのです。それで充分です」
本心である。
俊冬と俊春と相棒は、親父がプレゼントしてくれた大切な友人である。いや、ある意味では親父の形見といっても過言ではない。
しかもかれらは、おれのしらない親父をしっている生き証人でもある。
かれら自身のこともそうだが、親父のこともしりたい。
親父がどうして死んだのか、だれに殺られたかもふくめて……。
すべてのことをしることができる。
だまされていたことなど、ほんのささいなことにすぎない。
ということは、相棒のおれへのツンツンっぷりも、演技ではないってことだよな?
そこ、じわじわと心配になってきた。
「それにしても、よく信じる気になれましたよね?」
「ああ。自身、いまでもよくわからぬ。あの雨の夜、半次郎ちゃんに襲われたことより、おまえたちがあらわれたことのほうがよほど衝撃的だった」
副長は、一瞬だけおれのほうへイケメンを向けてきた。
それはそうだろう。
俊冬と俊春がどういう恰好をしていたのかはわからないが、あきらかに着物と袴姿ではなかったはずだ。
スゥェットスーツ姿で狼みたいな犬を連れたおれと、さらに着物袴姿でない俊冬と俊春が突然あらわれたのである。
副長でなくっても、ショックをうけるにちがいない。
「だがな……。なにゆえか興味がわいた。疑うって気はまったくなかった。さらに申せば、こいつらと組んだら面白いことになりそうだ。でっかいなにかをみせてくれそうだ。そう直感した。おれの勘はよくあたる。そうであろう?」
「ええ。あなたの勘は、あの二人の感覚以上にすごい」
思わず笑ってしまった。
副長らしい、と心から思った。
しかも、その第六感は大当たりしたのである。
「あいつらは、おまえやおれがかんがえている以上にかっちゃんや源さんを喪ったことに責を感じている」
副長は、イケメンをまえにもどしつつささやいた。
「主計。あいつらは、おまえを悲しませたことにはかりしれぬほどの責を感じている」
副長は、まえを向いたまま一つため息をついた。
「おれはもとからこの時代にいるし、かっちゃんや源さんの
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